漫才論争について

先月のM1決勝から、ワイドショーやネット界隈で議論されていますが。
マヂカルラブリーのネタは漫才か否か?」
という議題。

 

歳も明け、ある程度着地点も見えてきたかと思いますので、まとめてみようと思います。


①漫才の定義
これについては、爆笑問題の太田さんの説明で一つの結論が出ているのではないでしょうか。


私も簡単に漫才の歴史をググってみましたが。

結局、批判する方々が求めていた「しゃべくり漫才」も、元来、漫才の歴史の中では突然変異の亜流だったとのことです。
昔は楽器を使っていたとのことなので、正統かどうかを問題にしてしまうと、
それこそテツトモやどぶろっく、(人数の縛りもなかったようなので)超新塾が漫才の本流という話になります。


また、ラジオでも面白いのが~云々とおっしゃる方もおられますが、
漫才の歴史はラジオが一般的になる前から始まっています。

なので、そこに縛られるのもおかしな話になります。


②漫才の進歩について
そもそも思うのですが、各種の文化は、関わる人口が増えるほどその定義が広くなっていくのが一般的ではないかと思います。

 

音楽で考えれば、元々ピアノやバイオリン、フルートなどで演奏されていたものが、
エレキギターシンセサイザー、電子ドラム、打ち込み、果てはラップやデスボイスターンテーブル、サンプリング、ループステーションなど、
様々なものが融合し、ジャンルも多彩になっています。

 

小説であれば、一昔前に流行った携帯小説や昨今のネット小説など。
絵画も、現代美術と称され様々なものが発表されています。

ゲームも、元々トランプやモノポリー、オセロ、麻雀、花札や双六などが主だったものが、ビデオゲームの登場と共に多くの場所で取って代わられています。

 

関わる人口が増え、マーケットが拡大するとともに、新たな試みが加えられて、定義がより広義になっていきます。


なので、このように議論が起こる程漫才の表現の幅が広がっているのは
漫才という文化が拡大している証左でもあるのではないかと思います。


そしてこのような状態に陥った場合、
取りとめが無くなった段階で『ジャンル分け』をするのが一つの解法です。
クラシックのコンサートとロックフェスでは、演者も客層もまったく違うのと同じことです。
あるいは、オルタナティヴロックとハードコアロック、ドラムンベースとレイヴでも、ファン層が異なってくるのと同様のことです。


「漫才のコンテスト」と銘打っても、ジャンルが違い過ぎて審査員が審査しきれない。
観覧客各々の求めるものがバラバラになってしまう。

 

そういった問題が起こった場合には、
例えば「しゃべくり漫才」「シチュエーション漫才」「歌漫才」と、
コンテストや催し自体にジャンルの縛りを設ける必要がでてきます(『歌ネタ王』のように)。

 

今回のM1は漫才一般が対象ですが、このまま発展していけば、
将来もしかしたらジャンルごとに区分されるようになるのかもしれません。
どちらかというと、そちらの方が健全な進歩の仕方だと思います。


③面白い・面白くない論争
これもあちこちで言われていますが。

技術的なことで言えば、よく言われる「緊張」と「緩和」。
今回の舞台上で、この落差を大きく表現できていたのが、今回のマヂカルラブリーだったのではないかと思います。

 

フレンチの最初のマナーの説明~窓から飛び込む下り
俺んちに来ちまった~「終わりー」じゃねえよ
カートを押す動作~「サンドイッチ」~「一つ下さ~い」

と、各所で溜めと決めがだいぶ効いた演目になっていたと思います。


ただ一方で、面白くなかったという意見もあります。


要因として考えられるのが、
一本目
●シェフの心臓を握りつぶすくだり:恐らくハンターハンターが元ネタか
●丸太でドアを壊すくだり:中世ヨーロッパが舞台の映画などで見かけるもの
●魔法陣で化物を召喚:魔法モノの少年マンガでみかける設定
と、主に10代~30代の人の方が簡単に想像できるものが題材になっています。

 

また、二本目は
●(座れないほど)混んだ電車
箱根登山鉄道
●中央線
と首都圏や中部地方に縁のある方でないと、想像がついていけないかもしれない題材です。

 

なので、私の予想としては
・主に50代以上の方
・首都圏、中部以外の方
が、なかなか設定に入り込めず、面白いと感じなかったのではと考えています。


今回で言えば、見取り図も、かに道楽など大阪由来のものを持ってきていました。
観光名所ではありますが、大阪の方とそれ以外で多少の温度差は生じてしまったのではないかと思います。

 


今回の議論は、理屈で考えるとこのようになるのではないでしょうか。
もしかしたら現在は、漫才という文化の一つの大きな過渡期にあるのかもしれませんね。